光より速いニュートリノ

土 旧暦8月27日 仏滅 壬午 三碧木星 Gerhard Gert V38 22872日目

僕がまだ若くて物理学に少しは興味を持っていたころ、ニュートリノに質量はあるか、ということがひとつの課題になっていた。それは目には見えなくとも身近な素粒子で、無数のニュートリノが地上に降り注いでいるはずである。しかし電荷を持たないので泡箱に軌跡を残すこともない。今ではニュートリノには質量があるということが物理学上の定説になっている。世の偉い先生方がこうなっていますと発表されれば、僕らは単純にそういうものかと受け入れるしかない。宇宙はビッグバンで始まったと言われれば、自分にはそれを信ずる根拠が無くてもそういうものかと思ってしまう。ニュートリノに質量があるならば、それは光速を超えることは無いはずである。光が光速で走ることが出来るのは光子には質量が無いからである。ところが、昨日、CERNが実験結果を発表した。それによると、ニュートリノは光速よりわずかに速く走るということであった。質量を持つものが質量を持たないものよりも速く走るということはどうにも僕は理解できない。アインシュタイン相対性理論は、万物は光より速く走ることは無いに違いないという、一種の直観的仮説から出発している。その前提が覆れば、物理学の理論は大幅な修正を受けることになるのであろうが、実験結果がどこまで信頼できるものか、何とも僕らには分からない。