水兵離別僕の船

2018-11-26 (月)(平成 30 年戊戌)<旧暦 10 月 19 日>(仏滅 壬戌 二黒土星) Linus  第48週 第 25492 日

 

今の中学生、高校生も同じかもしれないが、半世紀前、僕は高校時代の化学で、元素の小さいものから並べた順を覚えるのにそんな文句で覚えた。この世で一番小さな元素は水素で、その次はヘリウム。水素の原子核は陽子ひとつである。その次のヘリウムの原子核は陽子二つの他に中性子二つが一緒になってゐる。二つの陽子同士はものすごい電気の反発力で飛び散らうとするから、陽子 2 個だけでは原子核を構成できない。反発を繋ぎ止めるために中性子2個も同居しなければならない。電気で飛び散らうとする力に打ち勝って強い強い力で固く結びついてゐる。元素が大きくなればなるほど、中性子がたくさん必要になる。ウランなどの大きな元素の原子核は陽子と中性子がてんこ盛りになってゐて、どうかすると、ポロポロとこぼれやすい。こぼれる時には、必ず陽子2個と中性子2個がまとまって落ちる。これはヘリウムの原子核で、α粒子と呼ばれる。大きな元素がα粒子を放出して別の元素に変はることをα崩壊といふ。もし、何かの拍子に中性子がフラフラとやって来て大きな原子核にぶつかると、原子核の中は上を下への大騒ぎになって核分裂が起きる。分裂した後にできた二つまたは三つの小さめの原子核中性子を分裂前ほどたくさん必要としないから、余った中性子がまたフラフラと外へ漂ふ。するとそれが別の原子核に吸収されて、条件さへ揃へば核分裂の連鎖反応が続く。飛び出た中性子は、もし吸収されなければ、電子とニュートリノを出して陽子に変はっていく。その半減期は 10 分ほどである。だが、陽子になってしまへばもうそれ以上には変化しない。陽子も中性子も質量は電子の 1800 倍もある重い粒子であり、バリオンと呼ばれる。電子の様に軽い粒子はレプトンと呼ばれる。その中間にメソンがある。バリオンは3個のクオークから成り、メソンは2個のクオークから成るとされる。バリオンとメソンを一緒にしてハドロンと呼ぶ。なぜ陽子には電荷があり中性子には電荷がないのかもクオークの構成の違ひで説明される。星霜移り人は去り、諸行無常を理とする人の世に、たといこの身が滅んでも、その先に残る陽子だけは未来永劫不変であると信じられて来た。ところがその陽子さへも、途方もない年月の果てには、崩壊することが予想される様になった。カミオカンデが建設された当初の目的はこの陽子崩壊を実証することにあった。陽子崩壊時に出るニュートリノを検出する目的で建設されたが、宇宙の彼方の超新星爆発で生じたニュートリノを偶然捉へてノーベル賞受賞に繋がった経緯がある。今日のブログは唐突な書き出しになったが、今日、Stockholm で、KVA-JSPS Seminar が開かれて、日本とスウェーデンの6人の先生方による講演会があったので聞きに行ってきた。その中で、梶田隆章先生はカミオカンデを紹介し、スーパーカミオカンデ、ハイパーカミオカンデカムランドなどについてお話された。陽子崩壊実証が一連のプロジェクトの一貫した目的であることにも触れられた。ブログが長くなるので講演会の内容については明日に回します。

 

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晴れた日に広い空を仰ぐことができればそれだけで幸せなこともあります。