Baka と Grilla

木 旧暦 3月2日 仏滅 乙未 二黒土星 Olivia Oliver V15 22346日目

今回の東京滞在はスウェーデンで働いているフランス人と一緒であるので、食事も一緒にすることが多い。鉄板の上に肉や野菜を置いて焼く場合も日本語では焼くというし、パンを焼く場合も焼くと言う。ところがスウェーデン語では鉄板焼きは grilla だし、パンを焼く時は baka である。「grilla を日本語に訳する場合も baka を日本語に訳する場合も日本語では同じ言葉になるんだよ」と言うと彼は目を丸くして驚いた。「どうしてだい、熱い火の上に網や板を置いて調理するのが grilla で、オーブンのように容器の中に閉じ込めて暖めるのが baka だろ、全然調理の仕方が違うじゃないか」 この説明を聞いた時、お皿の上でカサッと何かが落ちる音がした。あれは僕の目から落ちたうろこの音に違いない。日頃良く使うこれらの単語をそんな風に意味づけてみることがなかったからだ。何だかすごく利口になった気がした。ところが、それでもやはり、「焼く」という言葉には日本語にしかない意味もある。藤原定家が自ら百人一首に選んだうた

来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ

の場合の「焼く」は baka だろうか grilla だろうか。いずれでも無いような気がする。塩ってどうやって焼くのだろう。ちなみにこの歌は男が女の気持ちになって詠んだ歌であるという。現代でも男が女になったつもりでよむ歌には良い歌が多い。例えば、「時の流れに身を任せ」などがそうだ。あまりこんなことを書いていると、ホテルを抜けてカラオケに行ってしまいそうなので、この辺でやめて早く寝よう。