都はなれぬ我が身なりけり

水 旧暦 2月23日 赤口 丁亥 三碧木星 Irma Irmelin V14 22338日目

もう20年以上も前、日本で会社勤めをしていた頃は毎日が忙しかった。当時はまだ仕事の中で電子計算機を使うことが一般ではなかった。ワープロ専用機というものがあって、新しい機械を買うなら、パソコンを買ってその上でワープロのソフトウエアを走らせるのが良いだろうか、それともワープロ専用機を買うのが良いだろうか、というようなことを、かなり真面目に論じていたのである。まず手書きの原稿を書いて、それをタイピストに頼むように機械で清書してもらうというやり方で仕事がなされていた時代であった。何年かして、基本ソフトウエアとしてウインドウズが登場してからは、ワープロ専用機は市場から姿を消したようである。ふっと昔のことを思い出したのは、この頃、あまりに仕事が忙しくなって、日本にいた頃とあまり変わらなくなってきたのではないかと思われるからである。あの時は、神仏の憐れみによって、会社を辞めさせてもらえた、日本を脱出させてもらえた、そして全く違う世界に飛び込ませてもらえた、と僕は信じている。言葉も通じない世界へ飛び込んで、ゼロから出発しなければ自分の再生はありえないとも思った。殆ど出家の覚悟で日本を脱出したのであるが、20年以上して気がついてみると、いつの間にか忙しい生活に戻ってしまっている。ブログを書く時間があるだけ実際は暇なのかもしれないし、忙しいのは仕事のやり方が下手なだけであるのは良く分かっているが、感覚的にはかなりきつい。これからは仕事を減らしていきたいと思っているのに、どうしたことだろうか。

世の中を捨てて捨てえぬ心地して 都はなれぬ我が身なりけり (西行