子供の頃の思い出話ーその一

水 旧暦8月4日 大安 丙午 六白金星 Alfhild Alva V36 21757日目

小学校低学年の頃の僕は体が弱かった。朝お医者さんに行ってから登校する日も多かった。すると大幅に遅刻していくことになった。友達がもう誰も登校していない道をランドセルをしょってひとり学校に急ぐのは恥ずかしい気がした。今なら堂々と遅刻するのであるが、あの頃の僕はそのような図々しさを持ち合わせていなかった。そんなある日、登校の途中でさらに困ったことが起きた。給食費か何かを学校に持っていく日であったのであるが、その封筒をどこかに落としていることに気づいたのである。どこに落としたのだろう、困ったなと思って、雨の中、下を向いて、来た道を行きつ戻りつした。一方で学校には早く行かなければならないとあせった。するとどこからか知らないおばさんが現れて、「どうしたの、何か探しているの」と優しく声をかけてきた。正直にお金をなくしたことを話すと、おばさんは「何も言わずにこれを持って行きなさい」と、お金をくれた。人から理由もなくお金をもらってはいけないことは分かっていたが、今困っている問題がこれで解決すると思って、手を出して受け取って学校へ急いだ。そのおばさんは僕がどこの家の子供であるかを知っていた。僕にお金を持たせるとその足で僕の家に行って訳を話してたてかえたお金を持って行ったらしい。こんなおせっかいなことをする人は今は居ないが、昔はいたのである。家に帰った僕は「今日何があったかを正直に話してみよ」と言われて驚いた。自分の悪かったことをこんこんと諭された。それで無論反省したのであるが、あのおばさんのやり方も卑劣であると思った。いつまでもこの事件のことを忘れずにいるのは、大人は信用できないものであるということを、あの事件をきっかけに知り始めたのではないかと後年になって思うからである。