冬の怪談

火 旧暦11月9日 先勝 丙戌 五黄土星 Abraham V51 21497日目 -5.1℃

ニーショッピングには古い小さな劇場がある。収容人員は300名程度。二階席もある。中に入るといかにもゆかしい感じがする。この劇場に入ったのは実は今日が初めてであった。町のセアタースクールの子供たちの演劇発表を見た。子供たちの発表とはいえ、プロフェッショナルへの芽生えが十分に感じ取られて見ごたえがあった。その演題は何と、ラフィカディオ・ハーンの怪談である。北欧初演ということであった。思ったほど怖い怪談ではなく、現実の世界とファンタジーの世界とを行き来しながら、不思議の世界を文学的に演出していた。演じている子供たちはことさらに東洋の雰囲気を出そうと努力している風でもなく、如何にもスウェーデンの日常生活と連続したところで演じているのであるが、それにも拘らず、昔の日本の美しい山野の原風景や、田園風景、四季の移り変わりがふっと眼前に現れるような効果があった。日本人の目から見て気になったのはお辞儀の仕方であった。日本的な雰囲気が出るようにお辞儀をするシーンがたくさん出てきたが、どうも不自然な気がした。それはお辞儀という行為が本来ある精神の状態を表す行為であることに理解が至っていないことから来る違和感であった。頭から背中にかけて丸く曲線を描くお辞儀ではなく、もう少し直線的なお辞儀にすれば、飛躍的に雰囲気が良くなるように感じた。子供の頃、「ラフィカディオ・ハーンは日本の名前も持っていて、小泉八雲というのですよ」と教わった時、どうしてもすんなりと分からなかった。彼は外国人であるか、日本人であるかが分からなかったのである。そのハーンがもし今日のこの劇を見たらきっと感激したに違いないと、僕は確信した。ハーンが今日の日本を見た時に、やはり日本を良い国だと思ってくれるかどうかについては確信が無いけれども。音楽はテープであったが、舞踊も良く音楽に合っていた。生演奏であればさらに効果が高かったに違いない。脚本も良かったと思う。残念なことに、今日は会社のユールボードの日でもあったので、途中の「雪女」まで見て劇場を出た。ユールボードについては明日書くことにする。