「そして父になる」を見る

火 旧暦 2月4日 大安 甲戌 八白土星 Adrian Adriana Fettisdagen V10 23764日目

同居人の休日であったこともあり、今日は隣町まで映画を見に行った。隣町といふのは Norrköping で、僕の町からは 70km ほど離れてゐる。わざわざ隣町まで行ったのは、そこで日本映画の「そして父になる」が上映されてゐたからである。スウェーデンで日本映画が上映される機会は非常に少ない。スウェーデン語の字幕スーパーつきであった。会場は座り心地の良い座席が60席ほど並ぶ、こじんまりした劇場であった。お客さんは10名ほどであった。ゆっくりと鑑賞できた。内容的にも訴へるところの大きい良い映画であると思った。タイトルの意味が最初は良く飲み込めなかったが、見た後でなるほどと納得した。つまり、主人公はこの事件が起きるまでは父親らしく無かったことを自分で認めるが故に、事件をきっかけとして「父になる」ことが出来たといふ訳である。出産した病院で赤ちゃんの取り違へが6年後に判明するところからストーリーが展開する。ふたつの家族の社会的なステータスの違ひと、子供への愛情のかけ方の違ひを対比させつつ物語が進行する。父が仕事に熱心であるあまり、家族への愛が薄いものになってしまったり、子供に過剰の期待をかけて教育することは現実の社会でも良く見られると思ふ。それを批判することは簡単であるが、ひとつの事件を通じてそのことを深く考へさせる内容になってゐた。挿入されるピアノ曲も効果を上げてゐた。グレン・グールドによるバッハのゴールドベルク変奏曲も良かったが、ブルグミュラーの練習曲であったか、場面に良くあってゐると思った。スウェーデンでは国際的に貰ひ子を育てることもかなり一般的であり、こちらでも多くの人の関心を引く映画ではないかと思った。