「戦争に備へよ」といふ雰囲気

2024-01-11 (木)(令和6年甲辰)<旧暦 12 月 1 日>(赤口 甲戌 二黒土星新月 Jan Jannike    第 2 週 第 27365 日

 

36年ほどもスウェーデンに住んでゐるのだが、この頃は外国に住んでゐることに、ふと不安の兆しを感じることがある。といふのも、周囲の空気の中に「戦争に備へよ」といふ雰囲気を感じるからである。Ulf Kristersson 首相自らが戦争の脅威を警告してゐる。穏健党党首であるが、言ってゐることは穏健ではないと感じられる。過去36年に首相がこんな発言をしたことはなかったと思ふ。ロシアとフィンランドとの関係の緊張もあるかしれないし、それだけ一般に世相が緊迫してきたといふことかと思ふ。警告を受けたとしても、軍事訓練も受けてない一般市民にどんな備へができるだらうか。太平洋戦争末期には日本の市民は庭先に防空壕を掘ったといふ話は聞くが、とてもそんな真似はできまい。僕はこの国では外国人であるので不安をより敏感に感じてしまふ。いざとなったら逃げる場所もない。戦争に限らず、災害や緊急事態に対して、常に「備へる」ことは大事と思ふのだが、「無防備のままでゐて、もし敵の攻撃を受けたらどうするのか」といふ問ひかけは、戦争を肯定する方向へ人を誘導しやすい。そして、その様な問ひかけの強まる傾向は、日本ばかりではなく、スウェーデンでも感じられる。昭和初期を生きた日本人たちの中には正しく考へる人もあったのだが、結局戦争は避けられなかった。昭和100年を前に、同じ間違ひを繰り返さない様に気をつけなければならない。それはどの国にもいへることと思ふ。

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