平家物語「法印問答 7」

2022-04-17 (日)(令和4年壬寅)<旧暦 3 月 17 日>(先勝 庚子 七赤金星)満月 Påskdagen Elias Elis 第 15 週 第 26737 日

 

後白河院のお使ひである静憲法印は怒りの清盛に向かって次のように話すのであった。「誠にたびたびのご奉公はおっしゃる通りです。浅からぬお働きをなさったことに決して間違ひはありません。一旦はお恨みになりますのも無理からぬものがあります。ではありますけれども、官位といひ俸禄といひ、御身にとってはすべて備はっておいでではありませんか。それはみな、御身の功の莫大であることを法皇様がお感じになってゐらっしゃるからこそです。近臣が何かを計画してそれを君がご許容なさってゐるといふことは、陰謀をはかるものの悪だくみでせう。人の言ふことを信じて、自分で実際に見たことを信じないのは俗人の欠点です。小人のうはついた言葉を信じて、特別な朝恩を受けておいでなのに、君に背き申し上げることは、現世においてもあの世へ行ってからもその恐れは大きいことでせう。およそ天の心は、天があおあおとして果てしがないように測りにくいものです。叡慮もまたさだめてその通りでありませう。下の身で上に逆らふことはどうして人臣の礼と言へませうか。どうかよくよくお考へください。結局私からただいまのご意見を法皇様に申し上げることにいたします。」と言って出て行かれた。いくらもなみ居た人々は「ああ、びっくりした。入道があれほどお怒りであるのに、ちっとも恐れずに、しっかりとお返事を申し上げたものよ」と言って、法印をほめない人はなかった。

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復活の日。よく晴れた一日であった。