平家物語「法印問答 5」

2022-04-15 (金)(令和4年壬寅)<旧暦 3 月 15 日>(大安 戊戌 五黄土星) Långfredagen Olivia Oliver 第 15 週 第 26735 日

 

(清盛は不満で仕方がない。清盛、重盛の親子は、保元の乱平治の乱と命がけで戦って、皇室の安泰のために随分と骨折ってきたはずだ。それなのに後白河院はこの親子にあまりに薄情でおありではないかと不満なのである。そんな不満の解消のためには何よりも話し合ひが大事なのだが、そこへ後白河院のお使ひとして静憲法印がやって来たものだから、清盛は盛んに自分の思ひを述べた。述べるうちにも感情が高まり、その訴へは怒りとなって次のように続いた。)後白河院は越前國を重盛の領國にしてくださったが、その領國は子孫の代になっても変更しないとお約束くださったのだ。ところが重盛が死んだ後、すぐにお取り上げになってしまったとはどういふことか。あと継ぎの維盛に何かあやまちがあったのであろうか。これがひとつである。

次に中納言に欠員が出た時、摂政基実の子基通(二位の中将)がその地位を所望して、清盛もできるだけその力添へをしたのだが、後白河院はついに聞き入れてくださらず、関白資房の子師家を就任させておしまひになった。たとひ清盛が不合理のことを申し上げたとしても、決定を下される前に一度くらいはご説明下さっても良かったのではあるまいか。ましてや、基通は本家の嫡子である。その血筋といひ、彼の位階といひ、理論から言って異議のないことを申し上げたのに、それを法皇がご変更なさったとは不本意なお計らひである。これがひとつである。

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聖金曜日。北国にも春を感じさせる一日であった。