消えたヘアブラシ

2022-03-22 (火)(令和4年壬寅)<旧暦 2 月 20 日>(先負 甲戌 八白土星) Kennet Kent 第 12 週 第 26711 日

 

共同生活をしてゐると、時々、モノがなくなる。この家には二人しか住んでゐないので、そのうちのどちらかが、無意識にモノをどこかに持ち出して行方不明になることがある。今回はヘアブラシがなくなった。行方不明になってからもう1週間ほど経つが、杳として行方がしれない。どうしたのだろう。モノがなくなって困るといふよりも、狭い浴室の洗面台の引き出しに置かれたヘアブラシが、どうすればそのように消えてしまふのか、それを持ち出したに違ひない人間(つまり僕自身であるか同居人であるか)の無意識の行為に潜む謎が、いまここでの研究テーマである。手のひらほどもあるサイズのヘアブラシであるから、どこか他の場所に置いたとしてもすぐに見つかりさうなものなのに見つからない。ハサミならば他の部屋へ持って行くこともありうるが、ヘアブラシは普通洗面台の前だけで使ふものである。これを持って他の部屋に行くことは考へにくい。髪をとく最中に電話がかかってきてヘアブラシを持ったままで部屋を出たのだろうか。旅行もしないのでそのために持ち出すこともない。やはり、浴室内のどこかにあるのだろうか。いくら探しても出てこない。あの白い柄の内側に Shiseido と刻印されたヘアブラシは日本の家に置いてあったものを持って来て使ってきた。生前母が使ってゐたヘアブラシで、昭和時代から使はれて来たものだ。よほど使ひ勝手が良いので、気に入って、毎朝手入れを欠かすことのなかったヘアブラシなのだが、一体どこへ行ったのだろう。

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日没後