「夜さり」といふ言葉

2020-12-21 (月)(令和2年庚子)<旧暦 11 月 7 日> (大安 戊戌 八白土星冬至 Vintersolstånd Tomas   第 52 週 第 26246 日

 

僕がまだ小さかった頃、僕らの地方の人は「夜」のことを「よさり」と言ってゐた。例へば、「よさりのおかずは何にしようかね」と言った具合である。それで僕もその様に真似てゐたのだが、学校に通ふ様になると、学校で習ふ言葉は「夜」であったから、「よさり」といふ言葉は次第に使はない様になった。といふか、いつの間にか忘れた。あれは方言だろうと思ったかもしれない。ところが、最近平家物語を手書きで紙に写してゐるうちにこの「よさり」といふ言葉に出くはした。何だか懐かしい気がした。この言葉は方言だからと思ひ、人前で使ふのは恥づかしい気持ちがあったのだが、決してそれは方言ではなくれっきとした日本語であったのだと知って誇らしげな気もした。昔の言葉が地方に残ることはよくあることだと思ふ。ついでに字引きも引いてみたら、岩波古語辞典と新潮国語辞典には「夜さり」が載ってゐたので驚いた。「サリ」は時が自然にめぐりうつる意味と出てゐた。「夕されば門田の稲葉おとづれて」の歌も、時が自然にめぐりうつって夕方になったので、といふ意味になるのと同じであると思ふ。

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冬至の日の入り日はいちばん南に寄る