タイプライターのチン

木 旧暦 3月3日 大安 丙辰 五黄土星 Holger Holmfrid V13 24887 日目

タイプライターは今ではコンピュータに取って代はられたが、世の中にタイプライターが登場した当初は文明の最先端の機器であった。行の終はり近くまで打つとチンと音がなる。その音に文明の危機を予感したといふエッセイを、青春時代にどこかで読んだのを僕はなぜかそこだけおぼろげに覚えてゐる。今は身の周囲に発する文明の音は飛躍的に増えた。スマホに最新のニュースが入るたびに音がなる。ポットのお湯が沸くとピーっとなる。炊飯器もさうだ。電子レンジもチンとなる。僕は今では耳が遠くなったからあまり感じないが、この様な音の氾濫する社会に生きると、もうそれだけで人間は疲れるのだと思ふ。文明の利器を使はずに暮らせば良いのかもしれないが、なかなかそれもできない。タイプライターのチンの時代が懐かしい。