人工知能と言霊

月 旧暦 6月1日 赤口 丁亥 四緑木星 新月 Ulrika Ulla V27 24607 日目

Google translate などの自動翻訳を僕は頻繁に利用してゐる。いつまでたっても外国語能力の貧弱な僕はその恩恵を十分被ってゐるけれども、機械が人間の言葉にどこまで近づくことができるかは自づから別問題である。言葉は本来、人間の精神と深く結びついてゐるからだ。言葉は「道具」ではない。ただの「記号」でもない。意思が通じればそれで足りるといふものでもない。言葉は古来「言霊」である。Google translate で翻訳される表現の背後に隠された世界は誠に大きいものがあると言はねばなるまい。だが、一方で、人工知能とは、人間が考へる筋道と似た様な事を機械がやるのだと言ふ。それならば、人工知能は人間が作る言葉の世界にどこまで近づくことができるかは一つの興味あるテーマではある。例へば、「居数日羽引兵西屠咸陽殺降王子嬰焼秦宮室火三月不絶」といふ文字列を見たら、直ちに日本語の文として読みくだし、「居ること数日、羽、兵を引きて西し、咸陽を屠り、降王子嬰を殺し、秦の宮室を焼く。火、三月絶へず」と明朗に音読してくれなければ困るのだ。そして、読者が知らなければ、この「羽」は人名で「項羽」のことだよと教へてくれなければ困るのだ。人工知能が僕には難しい漢文を次々に読み解いて日本語として解説してくれる様になったら、今では馴染みの薄くなった漢文の世界を人工知能に教へてもらふ日も来るかしれない。そして僕らは精神の涵養を機械に受け、それによって日本語の世界を「言霊」のレベルに取り戻す日が来るかもしれない。