今川節からの手紙(11)

月 旧暦 12月9日 友引 己亥 九紫火星 Hilda Hildur V3 24439 日目

89年前の今日(昭和2年1月18日)、今川節作曲楽譜第11号が発行された。大正天皇はクリスマスの12月25日にお隠れになったので、昭和1年は実質的には年末の6日間しかなかったのだと思ふ。それでこの正月は既に昭和2年を迎へることになった。前回の手紙の日付が大正15年11月25日で、今回は昭和2年1月18日であるが、1年以上飛んでる訳ではない。この年、今川節は二十歳を迎へた。昔は正月を迎へると皆一斉に年をとったものだから、満で数へれば(この言ひ方が既に歴史的)まだ10代であったのです。今回の作品は彼の代表作にもなってゐる「ペチカ」と「吹雪の晩」(いづれ北原白秋作詞)です。その手紙を以下に転載します。

手紙にかへて 今川節

新年をむかへて私も二十といふ年を数へなけれバならなくなりました。昨年は宮原禎次先生や成田為三先生の御みちびきと、多くの皆様のおはげましとに力づけられて、楽しく自分の仕事をつゞけてこられたことを深く感謝せずにはおられません。作曲といふ仕事を私は三年近くつゞけて居ます。しかしその間の進歩はほんとうに遅々たるものです。之は一方つとめをもつ私には時間の少いことも原因しますけれど、やはり自分の不才と不勉強によるのでせう。今年こそはほんとうにしつかりやりたいと思つて居ます。どうぞ多くの皆様が昨年にまして尚一層御指導下さいます様くれぐれも御願ひいたします。

楽譜について

今月は旧作ですが時節柄と思ひましてこの二曲をかく事にしました。毎冬たくさんの雪をむかへる私には、かうした詩がほんとうになつかしく思はれます。詩の気持をはつきり歌ひ出せたかどうかはしりませんが、自分としてハ二曲とも割合すきな曲です。

(来月ハ柳昿氏作詩 「冬の日」ー 近代風景一月号掲載 ー)

昭和二年一月十六日印刷納本 昭和二年一月十八日發行

(非賣品) 編輯 發行 印刷人  今川 節