比叡散策

火 旧暦 8月17日 赤口 戊申 四緑木星 Mikael Mikaela V40 24338日目

琵琶湖湖畔のホテルを8時にチェックアウトして京阪坂本からケーブル坂本まで歩いた。高校生たちの通学の群れに変な男二人が紛れ込んでしまった。高校生たちは連れ立って坂道を登って行く。その歩調にあはせて僕らも歩いた。ここは東海自然歩道の一部になってゐる。水の流れもある。毎日の通学にこんなに素晴らしい散歩道を歩くことができるなんて、この生徒たちは恵まれた環境だなと思った。暑くもなく寒くもなく、素晴らしい日和に恵まれて、ケーブルカーの窓から下を見下ろすと、柔らかい朝の光を浴びて湖水がてきれきと輝いてゐた。琵琶湖の側から比叡山を超えて京都に入ってみたいと、昔から思ってゐたが、今日はそれが実現できた。昨日の宇治、伏見散策ではたくさんの外国人観光客に会ったが、延暦寺には日本人の老人しか居ないねとダニエル君と笑った。芥川龍之介の「邪宗門」に、摩利信乃法師といふあやしげな法力を使ふ沙門が横川の僧都と法力の対決をするシーンがある。それを読んだ時から、僕は横川には一度行ってみたいと思ってゐた。今日はそれも実現できた。横川にはもうひとつ行ってみたい大事な場所がある。道元禅師得度の地である。ダニエル君と二人でそこまで足を伸ばした時、もはやあたりには人影もなく、そこは静まり返った聖地であった。800年前、両親を亡くし13歳になったばかりの道元がこの地で得度した。その情景を思ひ浮かべると胸に迫るものがあった。傍には高い古木が林立してゐる。樹齢は数百年はあると思ふ。一木の幹に手を当てて、「君は道元禅師が得度した日のことを知ってるかい」と聞いてみた。鎌倉新仏教の創始者たちはみな比叡山で修行してゐる。日本の仏教は比叡山なしでは語ることができない。それで、今日は比叡を散策し、午後の後半には京都市中も少し歩いて、良い一日であった。