今川節からの手紙(8)

日 旧暦 7月10日 仏滅 辛未 五黄土星 処暑 上弦 Signe Signhild V34 24302日目

89年前(大正15年8月17日)、今川節作曲楽譜第7号が発行された。以下はその引用である。発表された当日の8月17日に載せようと思ってゐたのだがうっかりして数日遅れてしまった。発表された曲は「羊飼ひ」と「代掻き馬よ」である。

今月の作曲について 今川節

「羊飼ひ」この曲の旋律には、私の作曲として、今までにない多くの装飾的音符を用ひました。何故に多く用ひたかは、この旋律は作ったものであるにしろ、生れたものですから、私には云はれませんが、この曲を作った當時私は山田耕作先生の「馬賣り」を愛唱して居たので、自然あのなだらかなメロディーに影響されたものと思ひます。曲全体はだれ気味にならぬ程度に於て、なるべくゆっくりうたっていただきたいです。伴奏は朝の野原のやはらかい日の光、おだやかな気持をあらはすつもりで、やはらかく(時に右手の和弦を)ひいて下さい。そうして「世の中しらぬ」のところは特に力をこめてうたっていただきたいです。

「代掻き馬よ」元気よく、しかしあまり早くなく。

(大正十五年八月十五日印刷納本 大正十五年八月十七日發行)