あるじなしとて

月 旧暦 2月11日 赤口 乙巳 三碧木星 Holger Holmfrid V14 24156日目

懐かしの故郷の我が家に戻ってみると、玄関先の紅梅が多分風の強さで折れてゐた。主幹の下の方から伸びる大きなひとふりが無残にも裂ける様に倒れてゐた。今日は幸ひ天気も良かったのでその折れた枝をのこぎりで小さく切って運びやすい様にした。この梅は老木であるが、それにも拘らず枝によっては若い芽を出して今年も可憐な花を咲かせてくれた。いつも不在の主人のことをこの梅はどう思ってゐるだらうと思ひながら作業をした。ふと、「人間であるお前があるじで、梅である私はしもべだと、一体誰が決めたんだい」と言ふ声が聞こえた気がした。さうか、梅は己の生命を全うしようとしてゐるだけだ。誰か人の為に美しく咲かうとしてゐるのでは無いと、その時、思ひあたった。