昭和天皇実録

火 旧暦 8月16日 大安 癸未 二黒土星 満月 Anita Annette V37 23953日目

昭和天皇実録」が公開されたと言ふニュースを見た。昭和の最大の出来事は太平洋戦争であったと思ふが、本来平和を希求されてゐた天皇が何故開戦をお認めになったのか、また、ポツダム宣言受託をめぐっても、あの時期になってさへ徹底抗戦を唱へる強い勢力を説き伏せて和平交渉を推進させようとなさるお気持ちと現実との間にどの様な葛藤がおありであったか、僕にはしっかり分かってゐないことが多い。開戦前、天皇は陸軍参謀総長に「支那事変は二ヶ月で片付くと言って始めたのに、四年経った今も終はっていないではないか」とお尋ねになった。参謀総長は「とにかく支那は広うございまして」と答へると、「支那が広いと言ふなら太平洋はもっと広い。どういふ根拠で三ヶ月で片付くと言ふのか」とご詰問なさった話は有名である。外国人から見れば、日本では天皇が一番偉いのだから、天皇さへ戦争に「ノン」と言へば平和はすぐにでも実現するのではないかと単純に思はれてしまひがちだが、コトはさほど単純ではない。そしてその単純でない様子は、現代でもあちこちの局面で、似た様に起きてゐるのではないかといぶかられる。時代の勢ひと言ふか、嵐の様に襲ひかかる常識の強要と言ふか、大衆の迷妄が暴走する様子は、それが過ぎてからなら人はいくらでも簡単に批判出来るが、その渦中にある人たちには批判することなど殆ど不可能であると思ふ。さう言ふ意味では昭和史を単なる物語として聞くのではなく、自分たちの問題として読んで行く事が大事ではないかと、今日のニュースを見て思った。