ケーベル先生

月 旧暦9月14日 仏滅 戊戌 五黄土星 体育の日 Harry Harriet V41 22888日目

ホテルでメールのチェックをすることも仕事のうちと言ってしまえばその通りであるが、日本では祝日ということもあり、今日も休みの一日とさせてもらった。セーターでは暑いほどの暖かい一日であった。ひとり雑司ケ谷墓地を散歩してみた。久しぶりにケーベル先生のお墓にもお参りしたら、お墓を囲むように茂っていた木々が切られていた。落ち葉の掃除が大変であるから伐採されたのだろうか。ケーベル先生は確かチャイコフスキーの直弟子である。明治時代に政府の招聘に応じて東京へ来てピアノを教えた。音楽ばかりでなく美や哲学について21年にわたり東大で講義し、その感化を受けた人々によって日本の哲学が育った。漱石が書いたものの中にもケーベル先生のことが出てくる。その間、先生は一度もドイツへ帰ることはなかった。毎年頻繁にヨーロッパと日本とを当たり前のように行ったり来たりする僕はもうこの点だけでもお墓の前で何だか恥ずかしい。先生は告別の辞を漱石に託して日本を去ろうとしたが、戦争の影響で船の出発が見合された。そうしてとうとうヨーロッパに帰ることが出来なくて横浜で客死したのである。先生のお墓の前には、東京都教育委員会による文化財指定の立札が今も立っている。