町の表情

月 旧暦1月26日 友引 壬寅 九紫火星 Gunborg, Gunvor V10 21573日目

どんな町にも表情がある。初めて訪れた町であるのに、前に来たことがあるかのような感じを受けることもある。町が自分を暖かく受け入れてくれるように感じることがあるかと思うと、同じ町でも別の日には、「お前はまだいるのか」とか、「お前はここで何をしているのだ」という表情をされることもある。すれ違う人と言葉を交わして傷ついたわけでもないのに、町の方からそんな表情をされることがあるのだ。ひとえにこれは自分の心の状態がそのような形で表れるだけのことであると自分に言い聞かせるのであるが、町は時として、何かゆるぎないリアリティを持って、僕に迫ってくるように思われる。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」という歌も、あるいは僕の感じる町の表情と無縁ではないのかもしれない。僕がこれまでに体験した中で、一番暖かく迎えてもらえた町はストックホルムである。ひとりで初めての空港に降りたって中央駅まで行き、南へ向かう汽車を待つ間にガムラスタンを散歩した、その時の町の輝きは今も忘れない。よく来たねと励まされているように感じた。それがあったから、長くこの国に住むことが出来たのかもしれない。