小磯良平

日 旧暦6月30日 大安 戊寅 七赤金星 Klara 10e.tref. 21369日目

日曜日の朝、隣のペレが家に入りたがっていないかと気になって外に出てみるが姿が見えない。それでリビングルームに戻ってテレビのスイッチを入れたら、新日曜美術館をやっていた。日本では7月に放送されたもので、タイトルは「戦争画が生んだ名作 小磯良平 斉唱」であった。見るとはなしについついと引き込まれてしまいまで見た。ふたつの方向からの視線を組み合わせて1枚の絵が出来上がっているなど、言われて見なければ分からなかったが、あまり不自然には見えない。何人かが集まって歌を歌うのであれば合唱していてもおかしくないが、絵のタイトルを知らなかったとしても、不思議とこの絵は皆が声も音の高さも揃えて斉唱しているに違いない、と思わせる空気を漂わせている。小磯は戦前には戦争記録画を手がけていたが、それも決して戦意を高揚させるようなものではなく、兵士に与えられたわずかな休息の時、ふと人間に帰るような静かな一瞬を切り取って絵にしている。それでも戦争の絵を描いたという過去を、戦後もこの画家はずっと重荷としてひきずったらしい。番組の司会は黒沢アナウンサーと壇ふみである。壇ふみにはずっとこの番組を続けてもらいたいとも思った。最近身近にいいことがあるに違いない美しさを秘めているような。

一枚の絵に始まれり夏の朝