ロードス島(第4日目)

(2026-07-11 土曜日)

子供の頃には夏に海に行くのは大きな楽しみであった。泳ぎができないのに海に行きたいといふのも矛盾した話なのだが、小学6年生の時の臨海学級で2泊3日で杉津の海へ行った時のことを覚えてゐる。当時は北陸トンネルがなかったので、峠を越えるのに列車がトンネルをいくつも通過した。トンネルを抜けた瞬間に透き通るような藍色の日本海が見えて、見えたかと思ふとすぐにまたトンネルに入るのである。その繰り返しの光景がとても鮮烈で印象に残った。自分の住む町から海まではそんなに遠くもないのだが、当時はあまり交通機関もなくて、海は日常的な風景にはなかった。そんなこともあってか、文部省唱歌の「我は海の子」が好きであった。「高く鼻つく磯の香に」とあるように昔は浜辺に匂いがあった。海の水を舐めるとピリッといふ感じがあった。でも現代ではどこかヌメッとした感じがある。水に溶け込んだミクロプラスチックの影響だらうか。「我は海の子」は今ではその歌詞から想像できる風景を思ひ浮かべて楽しむだけであるのだが、それはやはり日本の海の風景だと思ふ。今、目の前に広がるエーゲ海を見ても、「我は海の子」のような感触は起きない。浜辺から海に入って少し泳いでみた。水を舐めてみてもやはりピリッといふ感じはしなかった。浜辺は裸足では歩けないほど熱かった。ゆったりと波が寄せたり返したりするのだが、海に入ってみるとそれは抗し難いほどの強い勢ひであった。いつものプールとは全然違ふ。やはり自然の勢ひはこはいものと思ふ。気弱な僕はとても沖に向かって泳ぐ気にはなれなかった。

夕暮れ時