藤野先生

講談社文芸文庫「阿Q正伝・藤野先生」(電子版)を読む。魯迅の作品を僕は読んだことがなかった。「藤野先生」といふ作品は魯迅が仙台の医学専門学校で学んだ頃の話である。時代は日露戦争勃発の年か。彼は藤野厳九郎といふ先生から解剖学を学んだ。藤野先生は清国からやってきた魯迅がちゃんと授業についてきてるかなと気になって、授業の後、個人的に彼の講義のノートをチェックし、隅々まで朱筆で添削した。抜けてゐる部分があると書き足した。そしてそれを毎週続けたといふのである。このことは魯迅を感動させずにはおかなかった。この話を読んだ時、僕も心が動いた。現代の教育の現場ではこのようなことは決しておこらないと思ふ。しかしかつて日本にはこれほどまでに人と人とが信頼し合へる関係を築ける場があったのだといふことを知って僕は励まされた。藤野厳九郎といふ人はどんな人だらうと思って、ネットで調べたらまた驚いた。僕の郷里の隣町であるあわら市に1874年に生まれてゐて、なんと小学校は、65年前に僕の通った小学校に140年ほど前に通ってゐたのだ。故郷にそんなに偉い人がゐたなんて知らなかったよ。そのお名前は多くの人々の知るところではないかもしれないが、僕はすっかり励まされた。

光を浴びて輝く雪。左の石楠花は新芽をつけてゐる。