北太平洋海底の天皇海山群

2023-08-24 (木)(令和5年癸卯)<旧暦 7 月 9 日>(先負 甲寅 四緑木星)上弦 Bartolomeus    第 34 週 第 27225 日

 

日本列島の東には太平洋が広がる。東経170°までも進むと、その海底には、日付変更線にほぼ平行して南北に、巨大な海山が連なってある。深さ約6000メートルの海底から、富士山級の巨大な山々が延々と南北2000メートルにわたって続いてゐる。北太平洋のこの辺りの海域はいつも暴風で荒れ狂ってゐる。その海底に眠る山々のひとつひとつには日本の天皇の名前が付けられてゐて、この一大山脈は天皇海山群と呼ばれる。これは我が国が勝手に名付けたのではなくて、世界に認められた正式の国際名称である。その名付け親は、Robert Dietz 博士であった。太平洋戦争の後、1952年に、アメリカから日本にやって来た海洋地質学者である。大戦中に日本が独自に調査してあったこの海域の海底地形データを参照、解析して、巨大な海山群があることを確信し、論文にまとめ、米国の地質学会誌に発表した。この時、Dietz 博士は山々のひとつひとつに日本の古代天皇の名前をつけられたといふ。応神海山、仁徳海山、神武海山、推古海山、桓武海山、、、といった具合にである。おそらくDietz 博士は、荒き波風の吹きすさぶ危険海域で、しかも戦場である海で、護衛艦もなしに単船で調査した日本の海洋学者たちの熱意に動かされて、日本の天皇の名前をつけられたのではないかと推定されてゐる。戦争で負けて焼け野原から出発し、平和を築かうとする日本人たちを励ましたいといふお気持ちも、もしかしたら潜んでゐたかもしれない。それにしても日本の古代の歴史に興味がなければ思ひつく命名法でもないと思ふ。一般の日本人よりも詳しく日本史を知る人が時々ゐるものだ。今日のブログは講談社ブルーバックス「太平洋 その深層で起こってゐること」(蒲生俊敬著)からの引用で書いた。僕はこの本を読むまではそんな事実を全く知らなかった。平家物語の「都遷」の章段に古代天皇の名前がたくさん現れるのを見て、この本を思ひ出して書いた次第である。

曇りがちであったが、夕方に晴れ間を見た。