平家物語「大塔建立 3」

2021-10-29 (金)(令和3年辛丑)<旧暦 9 月 24 日> (友引 庚戌 二黒土星)下弦 Viola 第 43 週 第 26557 日

 

清盛は都へ戻ると、院の御所に出向き、高野で体験した不思議な話を鳥羽院に申し上げた。鳥羽院もその話に深く感銘を受けられた。安芸守の任期を延長され、清盛に厳島の修理をお命じになった。鳥居を建て替へ、いくつものやしろを作り替へ、百八十間の回廊も造られた。改装工事が完了して清盛は厳島に出向いた。お堂にこもって夜通しお祈りした。まどろむ間に夢を見た。夢の中に御寶殿の内より天童が出て来た。天童はびんづらを結ってゐた。つまり髪を左右に分け、耳のあたりで丸く輪に結んだヘアスタイルをしてゐた。「私は大明神のお使ひである。汝はこの剣をもって一天四海を鎮め、朝家の御護りとなりなさい。」と言って、柄に銀を巻きつけた小長刀をたまはる夢であった。夢から覚めてあたりを見渡すと、枕元にその刀が立て掛けられてあった。続いて清盛は大明神のご託宣を聞いた。「汝、知れりや、忘れりや、ある聖をもって言はせしことを。ただし、もし悪行あらば、その繁栄は子孫まではかなふまじきぞ」子孫まで繁栄が続くかどうかはあなた次第ですよといふ条件付きではあったが、ともかくも大明神の祝福を受けてめでたいことであった。

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霧の中の散歩道