雨に濡れても

金 旧暦 1月29日 大安 庚午 四緑木星 Maria V9 23760日目

スウェーデン人は雨が降ってもあまり傘をささない。さういへば昔、日本の会社に勤めてゐた頃、会社にドイツ人がドイツ語を教へに来て、ある日、帰る時に外が雨だったので雨具の心配をしたら、そのドイツ人は僕の心配を察して、「カサ、イラナイ」とひとこと言ふと、暗い雨の中に消えて行った。その短い的確な日本語に感心したこともあり、その場面を良く覚えてゐる。一般にヨーロッパの人たちは日本人ほど雨にぬれるのを嫌がらない様にも見受けられる。そのことと関係があるのかどうか、25年を住み古したわがアパートでは玄関のドアを出るとすぐに雨に濡れる。室内は狭いので傘を広げられず、どうしても外に出てから傘を開くことになるが、その開くまでの短い間に濡れてしまふのである。いつからか僕も雨に濡れても平気な文化を受け入れる様になったので、そのことをあまり不便に思ったことは無い。だが、驚いたことに、きっと誰かが発案してくれたのだらう、玄関の外に新しく庇がつけられることになった。ほんの二、三日前に住人の知らないうちにてきぱきと施工されて、僕は同居人に言はれるまでこの新しい庇に気がつかなかった。やっぱり濡れるのが嫌なスウェーデン人も居ると見える。施工費は管理費から出るのだらう。庇がついて住まひがちょっとまた良くなった。