「善人ほど悪い奴はいない」を読んで

日 旧暦 10月9日 赤口 戊辰 二黒土星 上弦 Emil, Emillia Fars dag V45 22558日目

前回日本に行った時に買っておいた本の中から、今日は中島義道著の「善人ほど悪い奴はいない」という本(角川oneテーマ21)を読んだ。痛快であった。ニーチェとはどのような哲学者であったのかが書かれていて、哲学門外漢の私には、乾いた海綿が水を吸うように自分の中にひたひたと何かが満たされてくるのを感じた。そうは言っても多分すぐに忘れてしまうであろうから偉そうなことは言えないが、この本は単なる哲学の解説書と異なって、現代日本の抱える問題の原因がどこにあるのか、実は自分は悪く無いと信じている大衆によって社会が駄目にされていることを実例を挙げて述べていて、そのこととの関連からニーチェの言葉に迫るので具体的で分かりやすい。その具体的な部分だけはきっと忘れないだろうと思う。この本では、悪いことは何であるかを分析してそれを俎上に載せているだけではない。よほど鈍感な読者で無い限り、痛快な読み物だけでは終わらない。自分もまたその悪いことの片棒をかつぐ人間では無いだろうかという疑問とまっすぐに向き合わねばならないように仕向けられているのである。傲慢な思想の哲学者に思われがちなニーチェの意外な優しさ、弱さが紹介されていて、僕にとっては出会って良かった本の一冊である。