エレベータに鏡は必要か

水 旧暦10月15日 赤口 丙辰 八白土星 Konrad Kurt V46 21827日目

エレベータの室内に鏡は必要であろうか。もしもこれが病院のエレベータであったらどうであろう。ある患者がそうと知らずにエレベータに乗った時、壁の向こうにいる痩せこけた貧相の人間が、実は自分の姿であると知った時の驚きは、彼の病状を一層悪化させるかもしれない。では、もしもこれがホテルのエレベータであったらどうであろう。いや、これは、もしもということではなくて、今泊まっているホテルのエレベータがまさにそうなんであるが、箱の中に入ると、どんな端に立ってぐるりと一回転してみても、常に自分の後姿が見えるように出来ている。後姿ばかりではない。後頭部てっぺんの髪の薄くなった様子が実にはっきりと分かるのである。「エーッ」と驚くほど、その部分だけが老人なんである。ショックのあまり、老齢化が一気に進むおそれがある。もしもただひとつ、良いことがあるとすれば、後頭部のどのあたりに集中的に毛生え薬を塗るべきかがよく分かることであろうか。こうして考えると、エレベータの室内に鏡を置くことは百害あって一利無しのように思えるのである。