パワーポイントと黒板

木 旧暦10月16日 先勝 丁巳 七赤金星 満月15:18JST Kristian Krister V46 21828日目

プレゼンテーションと言えば、パワーポイントを駆使して、自分の述べたいことを発表することが一般的になっている。しかし僕は、どうにもこのパワーポイントによる発表が嫌いである。嫌いである以前に、話の内容がしっかり頭に入らない。この点、昔の黒板は良かった。先生が黒板に何か書き始めると、僕らは直ちにそれをノートに写し取る。それは数式である場合もあるし、絵である場合もあるし、英文である場合もあるし、詩である場合もある。いずれにしても、先生が何かを書いている間に、それが出来上がるまで見つめるわずかな時間は、自分の力で、あることを思考するための準備時間であったし、書かれたものをノートに写し取ることでひとつの重要な学習のステップが与えられていた気がする。話の進行に応じて、書かれている内容に微妙な追加や修正がなされる場合もあり、それはそれで、そういう過程を通じて、話し手の考えることに実時間で自分を従わせることができた。これがパワーポイントによる発表ではそうはいかない。確かにこぎれいにスマートに短時間で発表できるのであるが、何とも話し手と聞き手との間に問題を共有する意識が介在しない。たまに無理をして自分でノートを取ってみようとすると、「ノートを取らなくても、発表原稿を印刷してさしあげます」とお節介な親切で注意されることもある。まさか小中学校の授業がパワーポイントで行われることは無いと思うが、万一、そういう風にでもなったら、もはや日本に教育は存在しないに等しくなる。