腕時計の思ひ出

水 旧暦 3月9日 大安 壬戌 二黒土星 Irene Irja V14 24893 日目

毎年この季節は日本に居る様になったからかもしれないが、この花の季節は他の季節よりも一層昔を思ふ。あまり後ろ向きに生きるのは良くないなと思ひつつも、昔を思ふことでしばしの幸福に浸れるならそれに抑制をかけることもあるまいとも思ふ。夢みる力は時空としてはどっちを向いても良いのではないかと思ふ。高校 1 年になった春は親戚から腕時計をいただいた。今は安い腕時計がたくさん出回ってゐるけれども、あの頃の腕時計は、少なくとも我が家では、かなりの高級品であった。これから日本の高度成長が始まらうとしてゐた時期で、人々の暮らしの中に電化製品が普及し始めた頃でもあった。日付表示のついたその腕時計を僕は大事に扱った。小の月の月末には針を回して日付合はせをしたのも懐かしい思ひ出だ。大人へ一歩近づいた実感もあった。持ち物で成長過程を辿れる古き良き時代ではあったと思ふ。今の子は小学校からスマホを持たせられたりして、子供の持ち物と大人の持ち物にあまり差がない。この子たちに、僕が初めて腕時計を身につけた時の感動をどうしたら伝へられるかなと思ふこともある。