ひとり寝は畳の上で

水 旧暦 3月10日 赤口 庚戌 八白土星 V15 Otto Ottilia 23800日目

日本の自分の家に帰ってありがたいと思ふことのひとつは、夜、実にぐっすり眠れることである。爆睡といふことばがあるさうだが、まさにその様に良く眠ることが出来る。睡眠の質がもう全然違ふ。分析してみるに、これは寝台でなく、畳の上に布団を敷いて寝る効果ではないかと思ふ。一番低いレベルで寝るわけだから落ちる心配も無く、もうこれ以上の安定は無い訳である。人は畳に布団を敷いて寝る時、一番良く休むことができる、と僕は密かにさう思ってゐる。ところが同居人はベッドでないと眠れないと言ふ。同居人に日本の家に来てもらって一番困るのは家にベッドが無いことである。古い日本の家屋なのでベッドを置く様な部屋も無い。もう何十年も昔のこと、結婚した当初、僕は畳の上に寝たいと言ひ、同居人はベッドで休みたいと言ひ、折り合ひがつかず、結局毎晩それぞれが寝たい様に寝た。すると当然段差が出来て、寝物語を語るにも僕は随分上に向かって声を発せねばならない。本などで得た知識から、どうもこれはどこか違ふのではないかと察するところがあって、そのうちに僕も寝台で寝る様になってしまった。だがかうしてひとり畳の上で寝ると実に良く眠ることができる。