「香雨」という句集

土 旧暦 7月29日 大安 己卯 六白金星 Sigrid Siri V37 23230日目

片山由美子さんといえば、最近まで「NHK俳句」の選者のおひとりで、鷹羽狩行主宰「狩」の活動歴長き俳人である。その第5句集「香雨」が最近出た(ふらんす堂)。またNHK出版からは「今日から俳句」も出されている。この2冊の書籍をわざわざ日本から送ってくださる方があって、インクの匂いも漂うばかりの美しい本を手にした。世に俳人がひしめく中、個人の句集に名前をつけるのもなかなか大変なことではないかと思うが、今度の句集には「香雨」という上品な名前が付いた。あとがきを読むと唐の詩人李賀の詩からとったと書かれてある。いまどき、漢詩を味わう力を持つ人も少ないのではないかと思うが、著者にはこのような広範な知的バックボーンがあって、それが俳句の世界を広げているのだと思う。著者は俳人として有名であるが、もとはピアニストで、したがって西洋音楽に造詣が深い。過去8年間に中東やアフリカを含む実に14カ国へ旅していて、句集には海外詠が含まれている。西洋をとりまく周辺地帯、さまざまな文明発祥の地への憧れのようなものが感じられ、古き日本の季節感の中だけにとらわれていないところに、斬新性というか、柔軟性というか、自由性というか、もっと言えば普遍性が感じられる。西行にしろ、芭蕉にしろ、日本ではうたを詠むことは旅と密接につながていた。旅にはいつも新しい発見があり、感動があるからだと思う。片山さんの旅の句集もそういう一回限りの感動が随所に感じられる。著者はあとがきで「言葉にはならないけはいのようなものを言葉によって漂わせたい」と言っている。味わいのある言葉であると思った。