窓越しの桜

金 旧暦3月23日 先勝 甲辰 二黒土星 Artur Douglas V15 下弦 23075日目

新しい仕事場は、その玄関のホールは広く、空間は直線的である。光のふりそそぐ廊下を折れ曲がりガラス戸をいくつか通って先に進むと、正面には床から高い天井に届くほどの大きい窓が広がっている。その窓の向こうには山が迫っている。現代的建築による借景の効果を見るようである。最近はその窓の向こうに植えられた桜が満開となった。仕事の部屋に窓はないが、トイレに行くときなどにこの廊下を通る。そしてそのたびに窓越しの桜が目に入って、一瞬の慰めをもらう。その桜に向かって密かに挨拶を送ることもある。すると桜の方でも何か返してくれているような気がするのだが僕の力ではそのメッセージを読み解くことが出来ない。桜は誰もいないところに咲く姿こそ美しい。満開の桜の下に宴を張るのは僕の趣味ではない。