あの補聴器はどこへ行ったのだろう

月 旧暦 10月17日 友引 丙子 三碧木星 満月 小雪 Cecilia, Sissela V47 22566日目

無事に日本に着いたのは良かったが、途中で大事な補聴器を紛失してしまった。飛行機が着陸体勢にはいった時にないことに気づいた。ストックホルムの空港で手荷物検査を受ける時、補聴器をかけたままで検査器のゲートをくぐると必ず警報がなるので、脱いだジャケットのポケットに補聴器を入れて検査を受けた。検査が済んでからすぐにまた耳につけてしまえば良かったものを、ベルトをしたり、計算機をかばんにおさめたり、込み合いの中でつかの間を忙しくしているうちに補聴器を耳にするのを忘れた。それでもしばらくしてからそのことに気づいて、ジャケットのポケットから補聴器を取り出して、小さな筒の容器に入れ、それをかばんのポケットにしまったところまで覚えている。カバンは大きいのと小さいのと二つあって、これから飛行機に乗ると耳栓をするので、補聴器は日本に着くまで使わないからしまっておこう、そうするなら大きいカバンのポケットが良いなと考えたのを覚えている。ところが降りる段になってそのカバンのどこを探しても補聴器は見つからなかった。すると僕の思い違いであったのだろうか。小さい方のカバンに入れたのだろうか。実は魔がさしたというか、ヘルシンキ空港でかばんをひとつ買ったのである。いつも持ち歩くビニールの小さいカバンがところどころ擦り切れてきていることもあって、それと、そのカバンは欲しいものを取り出すのにいつもえらく時間がかかるので、いつか新しくしたいと思っていたのである。たまたま、空港のショーウインドウに並んでいたカバンは、ポケットの付き方やサイズがおあつらえ向きに出来ていたので、これから先二度と会えないカバンであるような気がしてきて、一度出たお店にまた戻って買ったのである。それで37番ゲートの待合の椅子でカバンの中身を入れ替えたことは確かだが、随分気をつけて入れ替えたので、よもや椅子の上に何かを置き忘れたことはあるまい。いや、でも考えられるシナリオはそれ位しか思い当たらない。あれは左右別々に特性に合わせて調整された高価な補聴器であって、その全額をスウェーデン社会保険で支払っていただいたものである。僕個人の不注意で社会のお金を無駄にしたかと思うと何とも申し訳ない気持ちだ。この先当分は補聴器の助けを借りない暮らしをしようかと思う。今回の出張はちょっと出ばなをくじかれた感じであるが、気をとりなおそう。