西郷隆盛が亡くなったのは1877年9月24日である。1868年に始まった維新革命はその西郷の死をもって完了したような感じがある。日本といふ新しい国家の建設に西郷がどれだけ貢献したかについての評価は、今なお大きく割れるのかもしれないが、僕は内村鑑三の「代表的日本人」に書かれてあったことをそのまま信奉したい。戊辰戦争を戦ひ、功成り名を遂げた人たちと並んで西郷も参議といふ要職に列せられた。しかし新時代を迎へて同僚たちはみな豪壮な邸宅、華美な衣服、外観の壮麗を求めるばかりで、それは西郷の理想とした社会の建設とはかけ離れたものであった。ここで西郷が硬いことを言はずにそこそこ皆さんと歩調を合はせていったなら、ある意味で周りの人たちも皆ハッピーであったかもしれない。けれども西郷は己の理想のために彼らと決別する道を選んだ。そのことが後世の日本人の精神に与へた影響はとても大きかったと思ふ。現代人でも、若い日の苦行の末にそこそこの幸せな生活が達せられた場合には、それから後はつつしみが消えて楽を望んでしまふことって多いのではないかな。現代にあっては自己を否定することはネガティブに取られることが多いけれども、我々の前に立ち塞がる種々の困難に立ちむかふためには、いま西郷隆盛の様な覚悟をお手本にせねばならないのかもしれないと思ふ。
