手くび血圧計

金 旧暦 11月11日 先負 乙丑 二黒土星 Anna V49 24764 日目

もう十年以上も前のことと思ふが、会社生活で長期出張が多く、できれば携帯用の血圧計を持ち歩きたいと思って一つ買ったことがある。ところがこれで測るとものすごく高い血圧になった。測定値がばらつくこともあるが、概して、高い方でバラついてゐる。とても実用に供するとは思はれなかった。それでいつの間にか使はず仕舞ひになった。最近部屋の整理をしてゐたら、その血圧計が出て来た。使はないものは捨てる方針だが、もし、ここで僕がこの血圧計を捨ててしまったら、何のためにこの血圧計は世に遣はされたのかとふと思った。それで電池を新しくして使ってみたのだが、やはり、昔と同じ様に高い値しか示さないのだった。それで、今度は、測定位置を心臓の高さではなく、もっと高い場所になる様にして測ってみた。昔と違って今は暇なので色々と実験ができるのだ。具体的には広辞苑ほどの暑い本を机の上に立てて、その上に肘を置き、腕をL字型にして上を向かせて測るのである。心臓よりも随分と高い位置である。何日間もこの位置で測ってみて、もう一つある血圧計で測った時と比較して、ほぼ同じ測定結果になることが確かめられたので、かういふ測り方にすることで、この手くび血圧計を、もう少し、といふか壊れるまで、使ってやることにした。