一身独立して

木 旧暦 6月28日 先負 丙申 四緑木星 Kristina Kerstin V30 23906日目

二日ほど前の日本経済新聞夕刊の「あすへの話題」(著者竹内洋)で丸山眞男のことが書いてあって、その中に福沢諭吉の「一身独立して、一国独立す」と言ふ言葉があった。丸山眞男は偉い先生だが人に用を言ひつけることはなかったさうである。全く次元の違ふ話だが、日本で仕事をしてゐた頃のことを思ひ出した。会社ではいつも価値の高い仕事をする様に言はれ、簡単な仕事は自分でやらずに極力他の人に任せる様に命じられた。例へば、コピーの1枚でも自分で取ってゐると、「その様な仕事は他の人でもできるでせう」と言はれんばかりであった。これが僕にはかなりの苦痛であった。スウェーデンに渡って仕事をするようになった時、最初のうちはどんなに細かい作業でもすべて自分の手でやることになったが、これが実に新鮮で自由でかつ僕には何よりありがたかった。例へば自分で書いた図面を自分で複写機にかけた時、刷り上がって出て来た瞬間に「あそこ間違へてないか」と気づく様なこともあった。他の人に複写を頼んでゐればそれに気づく機会が失はれたかもしれない。仕事はみんなでやるものだから当然チームワークは大事であるが、一方で、自分でできることは自分でやる、と言ふ原則も大事だと思ふ。仕事をやめた今でも、自分でできることはなるべく自分でやる方針をますます大事にしたいと思ってゐる。