推敲

水 旧暦 6月27日 友引 乙未 五黄土星 大暑 Emma V30 23905日目

唐の時代、長安の都で賈島が悩んでゐた。詩作にあたり「僧は推す月下の門」、「僧は敲く月下の門」この二つの表現のいづれが相応しいだらうかと悩んだのである。その故事から一度書き上げた文章を何回も読んで練り直すことを推敲と言ふと昔学校で習った。僕は何か書いてブログになるべく毎日更新する様に心がけてゐるが、推敲を経ることが無い。本当は書いたものを一晩か二晩寝かせて、後で読み直して手を加へてから更新するのが良いのだが、それをやらうとすると過程が複雑になるばかりで、毎日の更新が難しくなる。それでつい、思ひついたことをその場で書いて、そのまま更新のクリックボタンを押してしまふ。電子メールの送信ボタンと並んで、このボタンを押す時は僕の日常の暮らしで一番緊張する時間である。一度クラウドの向かう側に渡れば後戻りが効かない。原稿を修正して更新し直しても削除してもどこかに元の原稿が残ってゐる様なのである。けど、失敗を恐れて何も発言せずにじっと生きていくのは楽かもしれないが、その結果はいつか自分に悪い形で跳ね返って来ることになる。それで追ひ立てられる様に何か書いてしまふ。現代はスピード時代である。情報の洪水の中で、誰も推敲にかける暇はないのかも知れないが、それで果たして良いのかなと思ふこともある。