たけくらべ

日 旧暦 4月6日 先負 乙亥 六白金星 みどりの日 Monika Mona V18 23825日目

たけくらべ」と言へば、樋口一葉の名作を誰も思ひ浮かべるであらうが、僕はまず故郷の山を思ひ浮かべる。まだ小さかった頃、我が家の裏を流れる小川のすぐ対岸から田園がずっと遠くまで広がって、その行き着く先に山があった。そしてその山を越えたさらに向かうに二つの峰の頂が競ふ様に並んでゐた。その風景はまさに日本の里山で、僕の心の故郷のイメージとして今も胸に残ってゐる。人々はあの山を「たけくらべ」と呼んだ。それで「たけくらべ」は僕にとっては故郷の山なのである。国土地理院の地形図を見ると、「丈競山」と書かれてゐる。一方は標高964m、他方は1045mとなってゐる。竹田の里まではバスが出てゐるから、そこからなら直線距離で6kmほどであるが、山は危ない。登山経験の無い僕は特に単独では登ってみようとは思はない。ただ、あの頂から北を望めば、加賀平野、山中温泉九谷焼の里などが見えるだらうし、西には坂井平野、その先に日本海が広がってゐるだらうし、南には九頭竜川を挟んで大野方面が望めるはずである。山頂に立ったつもりでその様な風景を想像するのは楽しい。