男の書斎

日 旧暦 5月8日 赤口 癸丑 八白土星 Axel Axelina V24 23504日目

鴨長明はみやこの郊外に一丈四方の狭い庵を結び、そこに起居して「方丈記」を書いた。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」その冒頭のフレーズは僕にとっては高校1年生であった年の夏の思い出に重なり合う。鴨長明は800年以上も前にそんな狭い部屋に起居して、しかも、お仕事もそこでした訳であるから、そこのところが何とも偉いと思う。最も、お仕事をした、という意識はご本人には無かったかもしれないが。話は飛ぶが、スウェーデンの植物学者リンネも、かなり狭い部屋でシコシコと研究していたような話を聞いたことがある。歴史上で優れた業績を上げた人たちはその日常の作業にどれくらいのスペースを必要としていたかは分からないが、小さな部屋や机からも大きな研究や作品は生まれるものだろうと思う。ところで僕の場合、ベッドと仕事場とはくっついているので、休みの日など、ちょっと気分がだらけるとすぐに横になってしまって、一度こうなるともうその日は駄目なのである。これを避けるには家にゴロゴロしていないでどこか外へ行って仕事をするしかない。今はまだ会社勤めの身であるから、休みの日でも会社へ出かければ部屋があるが、もうすぐ定年で、そうなってしまえば、毎日行くところが無く、この目の前にあるベッドに何とか転がり込まぬようにするための工夫が要る。例えば、仕事机とベッドとを同じ部屋に置かないようにする、というような工夫である。そうすると、もうここで、方丈に起居するということができなくなる。同居人と僕とは、娘が一緒に暮らしていた時代を含めて狭いアパートでつましくやって来たと思っているのだが、それでもまだまだ贅沢をしているのだろうと思う。