朱に交われば

金 旧暦 7月11日 大安 壬寅 七赤金星 Bernhard, Bernt V33 22473日目

橋本左内は15歳にして啓発禄を書いた。小さい頃から勉学にいそしむ人であった。当時の人たちの勉学と今の人間の勉学との間には何か根本的な違いがあるような気がしてならない。どちらが良いとか悪いとか言っているのではない。昔の人のそれには不用意に近づきがたい威風と緊張とが漂っているように思われる。橋本左内のお墓の隣には啓発禄の石碑がある。年齢を問わず性別を問わず服膺すべきではないかと思われる言葉ばかりである。その中には「交友を択ぶ」という言葉もある。誰とでも気安く付き合う能力がひとつの価値とみなされる現代にあって、ややもするとこれは時代に逆行するような感じも受けるし、こういう方針を前面に打ち出すことは、あいつは鼻持ちならない奴だと思われてしまう危険と背中合わせでもある。けれども僕はやはりこの言葉の中に一片の真理を思う。表向きには誰にも開かれた開放性の余地を保ちながら、内面的な判断にあっては択びぬかれたものだけを採用するということはできるんじゃないかと思う。「朱に交われば赤くなる」。小さい頃から良く聞かされた言葉である。それはまた、人間という生き物が本来社会的な動物であることの証左でもあると思う。