早春賦

日 旧暦 11月26日 赤口 庚申 四緑木星 Sigurd Sigbritt V1 22251日目

日本のうたには良い歌がたくさんあるが、「早春賦」などはまさに絶唱であると思う。小学校の音楽の時間に初めてその歌を習った時、なんて奇麗な歌なんだろうとひとり深く感動した思い出がある。当時の音楽の時間といえば、先生が歌詞の意味を解説してくれて、ある意味で国語の時間の延長でもあった。中田章作曲、吉丸一昌作詩のこの曲は、日本人が西洋音楽の手法をよく消化した時代の象徴的な歌のように思う。が、「氷解け去り あしはつのぐむ」などと言う表現はまぎれもなく日本のものである。今日の日曜日、何もする元気が無くて、一日中ふとんの中にいて、パラパラと「新古今集」をめくっていたら、左衛門督通光のうたで、巻第一、春歌上に

三島江や霜もまだひぬあしの葉に つのぐむ程の春かぜぞ吹く

という歌が目に入った。それで、早春賦の作詞家は読者が「新古今集」のこのうたを思い起こすことを期待して作詩したかと思い当たった。僕には発見である。新古今集ではこの歌に続いて「しらなみ」で終わる水郷の春望のうたが2首続く。今日は幾分温かであるが、それでも氷点下5度くらいである。早春賦を歌うには早い。