秋の雨

木 旧暦9月18日 友引 己丑 八白土星 Finn V42 21800日目 9.8℃

久しぶりに雨が降った。夜のしじまに降る雨であった。スウェーデンの雨は大抵長くは続かないのであるが、会社に行こうかという時になってもまだ降っていたので、合羽を着て自転車で出かけた。忙しい時代になって、人は「雨宿り」をしなくなった。雨宿りの時間というのは無駄なようでありながら、結果的にはどこか貴重な時間であったような気がする。長い雨をぼんやりと眺めて一日を過ごすということもなくなった。自分ではそれと気づかぬ贅沢な時間。あんな時代に戻れないかなと自転車をこぎながら思った。着ている合羽はマント風で、ハンドルを握ると両腕の間に布が広がる。雨がそこに窪みを作ってしばらく走ると小さな池になる。会社に着くまでにできる池の大きさで雨量を知る。木々は紅葉してあたりはすっかり秋の色である。スウェーデンの夏は短いが秋は長い。葉の色が上の方は赤みを帯びながら下の方にはまだ緑が残っていたりする。その変わり方に毎日少しずつの変化があって面白い。昔の詩人は、時雨れるごとに葉の色の変わっていく様子を、男が言い寄るごとに少しずつ心を移していく女に見立てた。雨にけぶる秋の色も良いものであるなと思いつつ会社に急いだ。