曇りの朝

日 旧暦8月15日 仏滅 丁巳 四緑木星 Ida 17e. tref. V37 21768日目

山小屋に宿泊したが、階上にも階下にも寝袋がびっしりと敷かれていて、足の踏み場も無い。トイレに行くにも寝ている人の耳元の間に足を差し入れねばならぬ。低い天井に腰をかがめ、それでも何度も頭をぶつけた。発電機があるのか、灯りは夜通しぼんやりと点いていた。静かな夜ではあるが、どこからか携帯電話のマナーモードの振動の音が聞こえたり、耳元の割と近いところからいびきが聞こえたりした。どんな環境にあっても1分もあれば眠りにつくことができる僕であるのに、この夜ばかりは、まるで女にふられた夜のように、なかなか眠ることが出来なかった。1時半ごろから人が起き始め、次々に下へ降りていく。どうぞお先におやすみなさい、という気持ちでしばらく横になっていたが、間断なく人が動くので、とうとう僕達も3時には山小屋を出発した。眠られなかったことの原因が気圧のせいにあることに気づいた。自分が軽い高山病の様相を呈していることに気づいたのである。僕の体力からすれば、ここから下山した方が良いかなという気持ちもあったが、人の流れに押されて、頂上へと続く混雑の中に身を置いた。下の方に目をやれば、幾千の灯りの群れが蛇行した登山道のありかを示している。混雑でなかなか前に進まないが、漸く5時過ぎには頂上に着いた。残念ながら曇っていて、鮮やかなご来迎を仰ぐことは出来なかった。体力があれば、気象庁のレーダーのところまで行きたいと思ったが、断念して下山した。下山もなかなか容易ではない。休み休み下って、8時半ごろに五合目まで辿り着いた。新宿に行くバスは午後2時である。早く下山したがっている人たちと相乗りでタクシーに乗り、富士急の河口湖駅まで行った。9時48分の電車で大月に向かった。電車の窓から見える風景がなんとも穏やかで、この景色のためにまた一度、富士急に乗って見たいと思った。大月からはJRで東京に戻った。そうして疲れた体を休める為に午後はずっと横になった。テレビをつけると大相撲秋場所が始まっていた。