白い机

月 旧暦5月20日 赤口 甲午 六白金星 Adolf Alice V26 21683日目

先週、もう今は使わなくなった白い勉強机を出した。知人にもらってくれる人があったので取りに来てもらった。この机は思い出多い机である。僕達がスウェーデンに引越して来てすぐに、娘は小学1年生になった。まもなく机が必要になり、人からこれを譲り受けた。思いつめた挙句に日本の会社に辞表を書いてスウェーデンに渡った僕は、日本に帰っても、もはや給料の呉れ手のないことを知っていた。さりとて、スウェーデンの会社がいつまで僕を雇ってくれるかも未知であった。駄目になった時はやはり日本に帰るしかないか、と毎日思っていた。そうなったら困るのは子供の学校の問題である。いつ日本に帰っても子供が困らないようにするために、初めのうちはかなり真面目に日本の教科書を使って娘に勉強を教えた。親が危機的状況にあることを娘は何となく察するようで、毎日の夕食後の勉強に良くついて来た。そのうちにスウェーデンでの滞在が長くなったので、いつの間にか日本の勉強は薄くなってしまったが、それでも娘と毎日勉強を続けた日々は、僕には何にも代えられない幸福の日々であった。そういう思い出を秘めた机であるが、娘がストックホルムで暮らすようになってからは、この机をあまり活用することもなくなった。部屋をもう少し機能的に使えるようにするために思い切って手放すことにしたのである。机が引き取られていくと、またひとつ娘が遠くなったような気がした。