「生き様」という言葉

月 旧暦4月22日 先勝 丙寅 七赤金星 Vilhelmina Vilma V22 21655日目

「生き様」という言葉がある。僕の嫌いな言葉の筆頭である。NHKのアナウンサーでも抵抗無くこの言葉を使っているのを見ると、おかしいのはきっと僕の方であろうと思うのであるが、それでもやはりこの言葉は使いたくない。「生き方」と言っておけば良いものをわざわざ「生き様」と言い換えるのはどのような動機からであろうか。伊藤整の小説「典子の生き方」が「典子の生き様」であったならきっと誰もそんな小説を読まないであろうと思う。山本夏彦の随筆を読んで、「生き様」という言葉はいけない、「死に様」なら良い、と書かれてあったのに出くわした時、僕はすんなりと納得した。何故、「死に様」なら良いのであろうかと、ふと考えてみる。「様」という言葉は「様子」や「状態」を表わすのであるが、それはもともと自分の意志では動かしようの無い状況の説明に使われるのではないだろうか。「風の音よ、雲の様よ」雲は人の意志では動かない。「死に様」なら良いというのは、死んだ人はもはや意志を持ち得ないからである。これに対して「生き様」は、意志を持って生きている人間の様子、ということになって、生臭く、耳障りに聞こえるのではないかと思う。