「論語」の話

土 旧暦2月1日 友引 丁未 五黄土星 新月02:14JST Siv Internationella kvinnodagen V10 21578日目

吉川幸次郎著 『「論語」の話』 という本を読んだ。1966年にNHKラジオで放送された講座を元にした本で、録音がそのまま活字になった柔らかい語り口で書かれていて読みやすかった。短いお話が27回の講義にまとめられている。儒学というと、何か前時代的な教えであるという観念が先に立ってしまい、どこか形式的な礼儀の教科書のように思って敬遠しがちであるが、それは日本人の中に今も根強く残る誤解から来ているのかもしれない。例えば、子供は親に対して絶対に服従せよ、という教えは論語には無いし、「三尺下がって師の影を踏まず」というような厳粛な態度も、論語とは無縁のもので、日本に固有のものであるという。孔子は音楽にも感じ入るところ大きく、音楽を尊んだ。この書に一貫して流れるものは、人間の可能性への大きな信頼であり、それを日常の生活の身近なことから始めているという特長がある。人はなぜ学ばなければならないかについても書いてある。昔の学問と今の学問では学ぶ範囲は大きく異なるかもしれないが、学問とは何か、改めて問われる思いもする。「論語」をもとにしながら、随所に「史記」の「「孔子世家」の記述との比較が出てきたり、本居宣長論語をどう読んだかなどにも言及される部分もあったりして、奥行きの深い読み物である。