字への憧れ

水 旧暦10月26日 大安 癸酉 一白水星 Sven V49 21484日目 -0.3℃

紙に文字を書くことが少なくなった。それで良いのかもしれないが、やや淋しい気もする。僕らが高校生であった頃は定期試験があって、その問題は先生がわら半紙に謄写版で刷って来られたものであった。英語はタイプ印刷であったように思うが、国語などは手書きであった。問題を見ればこれは誰先生の字であるな、と分かったのである。

字に懸想するということもあった。ある女生徒に惹かれるというより、その書かれた文字から浮かび上がる書き手の性格に惹かれたことを覚えている。今でも字の美しい人に会うと、いけないと知りながらよろめく。携帯のメールだけでやりとりしているものにはこの味わいはないだろうなと思う。

僕が子供の頃は周りの大人の人はみな字がうまかった。今から思うと不思議である。大きくなれば声変わりがあるように、練習せずとも自然に字はうまくなるものと信じて疑わなかった。それなのに、大人になっても僕の字はハエの死んだのを並べたように見えるだけである。