帰ってきた靴

土 旧暦7月27日 先負 乙巳 七赤金星 白露 Alma, Hulda 21396日目 7.7℃

少しの間会社に出て、同居人の仕事帰りに自動車へ乗せて貰って帰った。その間際に自分の椅子でうとうとした。同居人は駐車場で待ちくたびれたらしい。「新聞には全部目を通すことが出来ました」と冷たく独り言のように言った。「良かったね」と低く答えた。それで謝罪の挨拶はすんだ。一度家に戻ってから今度はひとりでプールに行った。もう閉館の時刻が迫っていて自転車では間に合わないので、やむなくまた自動車を利用した。プールにはほぼ毎日のように行くものであるから、受付では顔パスである。いつものように頭を下げてカウンターの横を通過しようとすると、「これあなたの靴じゃないの」とお姉さんが僕の靴の片方を差し出した。4日前になくしたあの靴である。汚いズックであるのに、王子様が探し当てたシンデレラのガラスの靴のようにそれは輝いていた。何でも女性用ロッカー室の隅っこに転がっていたらしい。なぜそんなところに、と首を傾げてしまう。同時に、悪い奴が居るものだと言う数日前の思いは訂正せねばなるまいと思った。何かの間違いってどこにでもあるものだ。ちょっと気分が良くなって水泳を終えて帰途に着くと、空は暗く、稲妻が走り、雨になった。自転車で来なくて良かった、と思いつつ家に帰った。

稲妻や 天地ひとつに 染まりけり